『嫌がらせも兼ねて』 仁誕生日SS


授業中、退屈な教師の声を聞き流しながら、ふと壁にかかったカレンダーに目をやった。なんの気なしに眺めていたのだが、やがて一点に目をとめたとき、頭の中に何かがよぎる。
次の日曜日だ。あの日曜日が妙に引っ掛かる。
なにか予定でもあっただろうか。教師から見えないように携帯をとりだし、予定帳を確認する。しかしその日は真っ白で、まったくもって暇人であることを表していた。
ではどうして気になるのだろう。意識の端ではちょうど教師が「ここテストに出すぞ」と宣言していたが、そんなことより日曜日だ。穴があくほどカレンダーを見つめ、頭を悩ませる。遊びの予定か、バイトの予定か、はたまたもっと別の用事か。思いださなければ気が済まない。
と思っていたのだが、授業終了の鐘が鳴ると、とたんに興味を失ってしまった。これだけ頑張っても思い出せないのだから、どうせ大した用ではないはずだ。なにかがある気がするが、嫌な感覚もないし、良い感覚もない。どうせ野菜が安いだとか、ゲームの発売日だとか、自分には関係のないことなのだろう。それなのにこれだけ必死に考え込んでしまったのは、そう、つまりは授業が退屈すぎたということだ。
さて、昼休みだ。なにかおいしいもの――オムライスだとかカレーだとかを食べに行こう。いつものように後ろの席に座るクラスメイトを誘って、そして彼が嫌いなものを食べさせて意地悪しよう。彼ときたら、オムライスはグリンピースが入っているから駄目だとか、カレーはにんじんとたまねぎが入っているから駄目だとか、無茶苦茶な偏食家なのだ。
小さなこどもじゃあるまいし。そんなことを言っていたら、甘いものしか喜んで食べないんじゃないだろうか。お菓子とか、ジュースとか、ケーキとか。
ケーキ?
「あ」
巡り巡って思い出した。唐突に、次の日曜日が頭の中にひるがえる。
(誕生日、だ)

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